貧しい人たちに起業の機会を:学友人道奉仕世界賞の受賞者
2015-16年度ロータリー財団学友人道奉仕世界賞の受賞者は、国際開発の分野で活躍するニューヨーク在住のスーザン・デイビスさんに決まりました。授賞式は、6月に韓国での国際大会で行われます。
米国ルイジアナ州で生まれたデイビスさんは、1980-81年度のロータリー財団国際親善奨学生として、英国オックスフォード大学大学院で国際関係を学びました。
1987 ~1991年には、フォード財団のプログラム担当者として、バングラデシュでマイクロファイナンス(小口融資)の普及を推進。1億7500万ドルの資金を有する共同事業を企画・組織し、当初バングラデシュの農村部の5パーセントでしか利用できなかった小口融資を、44パーセントにまで普及させました。小口融資の普及がバングラデシュの生活水準向上に実際にどの程度貢献したかを断定することは困難ですが、『The Economist』誌は、2010年までの20年間にバングラデシュの人びとの平均寿命が59歳から69歳にまで躍進したと報じています。
デイビスさんはさらに2007年、開発支援団体「BRAC USA」を共同で設立しました。パキスタンから独立直後のバングラデシュを救済する団体として1972年に発足した「BRAC」を支援するこの独立組織は、特にアフリカの女性に教育、医療、小口金融の機会を提供することで、起業を促し、貧困からの脱出を支援しています。
最近、BRAC USAの最高責任者を退任したデイビスさんは、在任中、洪水、サイクロン、地震などの天災だけでなく、戦争や、疫病の流行など、数多くの困難に直面しました。2014年にアフリカ西部で突発したエボラ出血熱の大流行中は、危険度の高い地域で活動するBRACのスタッフを感染から守るために奮闘。エボラ専門家による協力にもかかわらずスタッフが命を落とすこともありました。特に、リベリアで小口融資支援を担当していたスタッフ夫妻が感染し、幼い娘を残して亡くなったことは、デイビスさんにとって大きな衝撃でした。デイビスさんはその後、その子の将来の学費を賄う奨学基金の設立を手伝っています。
社会起業に関する本の共同著者でもあるデイビスさんは現在、社会起業家の支援団体「ASHOKA」のディレクターを務め、これまでに中東、アフリカ、中央アジアにおける同団体の拡大を監督しました。
今では国際開発の分野で著名な存在となり、2012年にUnited Nations Partnerships Fund(国連国際パートナーシップ基金)の理事に任命されたほか、Council on Foreign Affairs(外交問題評議会)のメンバー、グラミン財団や二つの女性支援基金の理事会メンバーを務めています。
これまで多くの賞を受けたデイビスさんですが、今回のロータリー財団学友人道奉仕世界賞には特別な意味があります。「これで人生に一区切りついた気がします」と語るデイビスさん。「私が活動を続けてきたのは、重大なニーズとそれを改善できる機会があるからです。小口融資と社会起業という解決方法が世界中に浸透してきたのは、私にとってとても幸運でした」 。ロータリーの奨学生として学んだことについては、次のように語ります。「それまでは、オックスフォード大学など天上の存在だと思っていました。ところが実際に学生たちと知り合ってみると、貧富の差にかかわらず、誰でも弱点があり、完璧な人間などいないことが分かったんです」