ゲスト卓話

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「地域の子ども支援について」

こどもサポートやまなし 理事長 名執 義高様

 苦しい時期を乗り越えたのに、現在、またいろいろなことが起こっています。

 その背景を振り返ってみると、現在の状況には、
そうならざるを得なかった面もあるのではないかと思います。
派遣の制度ができて製造業にも拡大しました。
その時代、自殺した方は年間3万人を超える時期が続いていました。
2007年度には、生活保護の被保護世帯数が約110 万世帯となり、100万世帯を超えていました。
直近の統計でも約165万世帯となっています。
当時子どもたちを連れて炊き出しに来る方たちが増えたという背景があり、
子どもたちのために何かすべきだと考える人たちが集まって、こどもサポートがスタートしました。

 法人格を取得したのは2015年ですから、11年を経過しています。
子ども食堂は2012年から大田区でスタートして、瞬く間に広がりました。
2024 年度には全国で1万867 か所となりました。公立中学校の数を上回る規模になっています。
県内では61か所あります。子ども食堂が増えている背景には、
地域に子どもたちを支える仕組みがなくなってきていることがあるのではないかと思っています。
子どもは美味しいものを食べると、やっぱり笑顔になりますよね。
ほっとして大人に何でも話せる場所ができると子どもは、いろいろなことをやります。
自分が先頭に立ってリードしていくような存在になる子を何人も見てきました。
私たちが何かをしてやろうではなくて、その子どもの可能性を上手に引き出してやる大人であるべきではないかということを痛感しました。

 こどもサポートで行っている取り組みは、子どもたちとの関係を作る、家族との関係を作る、言いやすい場所、「助けて」、「嫌だ」と言える場所、
そういう心を開いてくれる場所を作るために、学習会あるいは子どもの遊び場を提供することです。
とにかく安心して住める場所、緊急宿泊施設というものの提供をしています。
生活が落ち着いたら、今度は、学校の問題です。学費がないんですよ。
支援した子どもの中に、外国籍の子がいました。
両親は離婚して母親と団地に住んでいました。
一生懸命勉強して大学に進学しましたが、母親ががんで亡くなりました。
すると、公営住宅の家賃が高くなっちゃうんですよね。
高額な家賃を求められて、そこを退去しなければならない。
私も引っ越しを手伝いました。
奨学金を月に4万円給付されることになりました。これは本当にありがたいと思います。
今年3月に無事卒業して静岡の病院へ就職しました。
卒業時に、その子が、このような支援をしていただいたことに感謝している、何か返していきたいというメッセージをくれたときは本当に嬉しかったです。

 これは、支援が実を結んだ例です。
他方で、DVが関係する場合には、法的問題に発展することも少なくありません。
DV被害を受けた母親の中には、精神的に深く傷つき、日常生活を立て直すこと自体が難しくなっている方もいます。
その影響は子どもにも及び、不安や対人不信、落ち着きのなさなど、さまざまな形で表れることがあります。
子どもは大人をよく見ています。
「この大人は本当に信用できる人なのか」、「本当に助けてくれるのか」と、私たちを試すような目で見ていることもあります。
子どもには、そういう力があると思っています。
精神的に深く傷ついた母親や、障害、疾病等により支援を必要とする方を就労に結びつけることは、簡単ではありません。
しかし工夫次第で就労のきっかけをつくることは可能ではないかと思っています。
私自身、建設業や運送業に関わり、また、農業を行う別会社を作り、支援を必要とする方に働いてもらう取り組みもしています。
何かきっかけをつくることができるのではないかなという思いで、こどもサポートの活動に関わっていきたいと思っています。

 生活支援には、大きな労力がかかってしまいます。
私たちの場合はほとんど寄付ですけれども、事業規模は本当に小さく、年間3 00 ~ 400 万円程度です。
ほとんどがボランティアで動いています。皆さんの寄付で成り立っていると思います。
本当は専属スタッフがいないとできない活動です。
そういうことを皆さんに伝えながら活動したいと思っています。
コロナ禍以降、DVの問題が多くなりました。
生活保護は減ったと言いますけれども、厳しい状況にある人は、これからまた増えるのではないでしょうか。
私たちにできることは何か、自分にできることは何か、本当に皆さんに考えていただければ幸いかなと思っています。

 子どもには可能性がある、その可能性を信じていきたい。
変えられるものと変えられないものを平穏な気持ちで理解し、見分ける勇気を持つ。
当事者意識をもって物事を解決していくことが大事だと思っています。
子どもを抱えて、DV 被害を受けている母親たちが当事者になって、
もっと自分たちの考えを述べていくような場が出てくると世の中も少し変わるのかなと思っています。
好きな言葉があるんです。
愛という言葉です。
愛の反対語は何かご存じでしょうか。
「愛の反対語は無関心だよ。無関心になってはいけない。無関心にならないで、いろいろなことに関心を持って自分にできることを見据えてください」。
私は今、旅立つ子どもたちにそういう話しをしています。