ゲスト卓話
「知っているようで知らないビジネスマナー」
―信頼関係を作る“伝え方とは”―
株式会社チアアップ 代表取締役 加藤 ひかる様
4 月になると皆様の会社にも新入社員が新卒で入ってこられ、Z 世代の扱い方が分からないという悩みをお持ちになるのではないかと思います。
私が思う「ビジネスマナー」とは、相手に対する思いやりであり、そして、「知っているようで知らない」のが、誠実な行動をることだと思います。皆様の会社でも、良かれと思ってしたことが、実は相手にとってはそうではなかった、ということがあるのではないでしょうか。今日は、そのような課題を考えるヒントとして、「知っているようで知らないビジネスマナー」、つまり、信頼関係を作る伝え方についてお伝えしたいと思います。
その中で、まずご紹介したいのが、ダニエル・キムの組織の成功循環モデルです。これは、組織の成果は単に「結果」からつくられるのではなく、①関係の質、②思考第1461回例会報告 令和8年3月4日(水)ゲスト卓話の質、③行動の質、④結果の質という 4 つが順に影響し合って生まれる、という考え方です。
たとえば、①関係の質を皆様の会社に置き換えますと、休みが多い、お金が多い、福利厚生がある、みんなが仲いい、楽しいなど、そういったことが関係の質に当たります。また、③行動の質とは、チャレンジしよう、前向きになんとかやっていこうというようなものです。個人目標や部門の目標がこれに当たります。そして、④結果の質とは、お客様から「ありがとう」と言っていただいた、みんなからサンクスカードをもらった、家族からも「ありがとう」と言ってもらったといった、やりがいや貢献の形です。
その中で、企業にとって一番課題になりやすいのが、②思考の質ではないかと思います。ここに関わってくるのが、無意識による偏見、いわゆるアンコンシャスバイアスです。例えば、「若いから人に教えることはできない。」や、「女性は、残業しないだろう。」「女性は、土日は出られないだろう。」といった決めつけです。しかし、相手の立場からすると、「言ってもらえればちゃんとやりました。」「最初から決めつけないでほしかった。」ということがあるわけです。つまり、こちらが良かれと思ってしたことが、実は相手にとってはそうではない、ということです。また、新入社員に対して、「私って怖い?」「優しいでしょ?」というようなことを冗談のつもりで言うことがあるかもしれませんが相手には冗談だと通じないことがあります。そうしたことの積み重ねで離職につながってしまうことがあります。つまり、悪気はなくても、「ないだろう」「分かるだろう」と勝手に決めつけてしまうことによって、相手にとっては「聞いてくれればよかったのに」「もっと話してくれればよかったのに」という思いが残ってしまうわけです。そうした小さな積み重ねが信頼関係を崩してしまうこととなります。
その中で、私がとても大切にしている言葉があります。それは、「本当の答えは相手が持っています」という言葉です。
これは、私が勧められた本の中で心に刺さった言葉です。私達は、どうしても自分の経験や立場から、「こうだろう」と答えを先に出してしまいがちです。でも、本当に相手が何を望んでいるのか、どう感じているのか、その答えは相手の中にあるのだと思います。だからこそ、誠実に、丁寧に、相手が何を望んでいるのかを聞くことが大事なのではないかと思います。これが、知っているようで知らないビジネスマナーの、とても大事なところではないでしょうか。
つまり、聞くこと、そして、相手が何を求めているのかを丁寧に聞くことが、信頼関係においてとても大事なものになるのかなと思っています。
また、若い人に対する指導の方法として、3 つのポイントがあります。一つ目は、現状を伝えること。二つ目は、それによってどのような影響が生じるかを考えさせること。三つ目は、現状を改めることによってどのような結果が生じるかを考えさせることです。今どういう状況なのかを伝え、そのことがどのような影響を生むのかを伝え、その上でどう変えていくとよいのかを考えてもらう。そのような伝え方が大切です。
さらに、無意識による偏見は、個人同士の関係だけにとどまらず、組織全体にも影響を与えます。採用、評価、昇給や育成などのタレントマネジメントや、リーダーの意思決定や行動選択にも影響を与え、結果として、ビジネス上の問題を引き起こすおそれがあります。その中で注意することは、公平性の決め方です。公平性の決め方の考え方として、3 つのポイントをお伝えします。一つ目は、効果性です。多くのスタッフにメリットがあるかどうかということです。二つ目は、実現可能性です。コストや制度の面から、実際に導入しやすいかどうかということです。三つ目は、持続性です。一時的ではなく、継続的にできるかどうか、ということです。
知っているようで知らないビジネスマナーは、誠実な行動を取ることだと思います。その結果、関係の質、思考の質、行動の質が高まっていき、結果の質にもつながっていくのだと思います。
本日は、思考の質を高めるヒントとして、公平性という考え方をお伝えさせていただきました。