青年海外協力隊の経験から

青年海外協力隊の経験から

JICA山梨デスク オードラン萌

1.JICAの行うODAの内容
①技術協力、有償資金協力、無償資金協力、国際緊急援助、JICA研修員招致、市民参加協力
②市民参加協力についての紹介

中小企業海外展開支援事業
昨今、途上国の経済成長と持続的な社会発展・貧困削減における民間企業や民間資金の重要性は増している。我が国も環境・気候変動、食料、資源などグローバルな問題に直面しているが、これらの問題を解決するには民間セクターの役割が決定的な重要性を持つといっても過言ではない。
JICAはODA事業を通じて蓄積した海外の現地情報や豊富なネットワークを生かし、開発途上国への海外展開をご検討される企業の皆様を支援したい。
【例】(株)桑郷×フィリピン、(株)サラダボウル×ベトナム

草の根技術協力事業
草の根技術協力事業は、日本のNGO、大学、地方自治体および公益法人等の団体による開発途上国の地域住民を対象とした協力活動を、JICAが政府開発援助(ODA)の一環として促進し、助長する事業。
【例】甲府市上下水道局×カンボジア

JICAボランティア事業
全国ではこれまでに49,562名が派遣され、山梨からは311名。現在は2,583名が派遣中だが、山梨からは18名派遣中。
  
2.青年海外協力隊の経験から
①派遣内容について

・派遣国:ニカラグア
・職種:小学校教諭
・派遣期間:2006年9月~2008年9月(2年間)

②派遣国について
・日本とニカラグアの国交:80年
・ニカラグアの位置する地域:中米(カリブ海と太平洋にはさまれている)
・ニカラグアを含む中米の歴史(スペイン支配化から独立へ)
・公用語:スペイン語
・平均気温:40度以上(雨季と乾季の2期があり、熱帯)
・自然豊かな国土、野菜やフルーツなども豊富
・人々は陽気。歌と踊りが大好き。

③現地で行っていた活動(プロジェクト)について
・JICAとニカラグアで連携した算数教育のプロジェクト「me gusta matematica(算数大好き!)」への協力
・目標:国指定の新しい教科書と教員用の指導書を作成
・目的:算数能力の向上を図り、国の発展へつなげる
・計画:10年以上(現在も進行中)
・背景:
▷教員養成学校できちんと算数の教授法を学べない→子どもにきちんと教えることができない。→子どもの算数能力が低下。
▷小学校を卒業せずに社会へでなければならない子どもも多い→せめて算数能力だけでも身につけることで、社会で生き抜くことが可能になる。

④活動を通して学んだことについて
Ⅰ.活動当初、ニカラグアの同僚とうまくいかなかった
初めて日本人と共に時間を過ごす彼らは、日本について様々な誤解をしていた。その誤解について私は苛立ってしまい、ストレスを抱えた。
→「ニカラグアは開発途上国で教育もきちんと受けられないから、日本について何も知らないのだ。」と思うようになった。

Ⅱ.しかし、日本人が持つニカラグアのイメージも誤解ばかりと気づく。
開発途上国ではない日本で生まれ育った私だが、派遣される前はニカラグアについて、まったく何も知らなかった。自分の周りの日本人も同様だった。
→「あ、私もニカラグアのこと知らない」と気づき、ニカラグアを「開発途上国だから」と考えたことについて反省。

Ⅲ.「知らない」という事実を受け入れると、「知りたい」と思うようになる。
相手のこと、相手の国のこと、相手の国の教育のこと、「知ろう」と態度を変えていったら、活動がどんどんやりやすくなっていった。
→こちらが「知ろう」とすると、相手も「あなたのことも知りたい」と自分と向き合ってくれるようになった。

Ⅳ.お互いのことを知り合うと「違い」が見えてくる。
「違い」に気づいたときに、それを優劣の判断基準にするのではなく、その「違い」をお互いに認め合いながら、取り入れながら活動を進めていくことで、よりよい結果がうまれるということを学んだ。

Ⅴ.「違い」に気づいた時、どう考えて、どう行動するか。
今も世界のどこかで戦争が起こっている。それはお互いの「違い」を認め合うことができず、どちらが優れているかを「違い」によって判断しようとしているからだ。宗教、文化、言葉、肌の色、世界には数え切れないほどの「違い」がある。それに対して、どう考えて、どう行動していくかが、世界平和へもつながっていくのではないかと考える。さらに、世界という大きな枠組みだけではなく、友人や家族、地域住民や仕事仲間といった身近な人間関係にさえ、この考えは通じるものと思っている。身近な人への自分自身のあり方を、一人ひとりが意識することで、少しずつ世界の平和へ広がっていくと、期待している。